衆議院本会議傍聴(2024年10月9日)

 代休をとって衆議院本会議の傍聴に行った。言うまでもなく解散の瞬間である。

 過去4回、解散をみるため現地に行った。1回はみられなかった。2014年の伊吹文明議長の、実際にはフライングではない「フライング万歳」のときである。いらい午前7時に一番乗りすることをつづけた。ばかじゃないのか。ばかだと思い、今回は常識的な時間に向かった。

 まえにも書いたとおり、本会議の傍聴は人が多ければ予約をとり、そこから呼ばれるしくみになっている。予約は面会受付で名前を記入すれば済む。開会の予定は15時半。昼を食べよう。きょうは「はしご」にしよう。はじめて入った。

 呼び出しは14時半。無事に名前を呼ばれ(呼ばれないこともありうる。詳しくはhttps://ohanabatake38.hatenablog.com/entry/2022/10/30/230809議場に向かうと衛視とべつの事務局職員がケンカをはじめた。ケンカというか、衛視が職員の指示にキレている。「きょうは傍聴人の数が多いものですから・・・」「こっちだっておんなじですよ!!!」。解散のようなイベントは本当に傍聴人が多い。

 議場に入り、開会10分前に予鈴が鳴ると、自民党議席にぽつんと吉川赳議員が座る。不祥事で党を離れた吉川議員は両院議員総会などに出席する必要はない。徐々に議席が埋まる。立憲議席最前部で若手議員の肩をたたくのは海江田万里副議長。議場入口では茂木敏充自民党幹事長がある議員と立ち話していた。議員は手帳を開く。議員は今期で不出馬の××××議員にみえ、え?と思ったが、自信がないので名前を出すのは控えよう。

 目下ピンチの高木毅氏が近づいたのが共産党議席だ。引退する穀田恵二氏に声をかけて握手。ついでに隣席の塩川鉄也氏とも握手。最後まで国対政治家である。高木氏につられたか、ややあって後ろに座る公明党赤羽一嘉国交相も穀田氏に声をかけた。こういう風景をみられるのが傍聴の醍醐味だ。地元で大もめの神田憲次議員は議場でもっとも赤いネクタイを揺らしながら入場。闘志のあらわれか?

 内閣不信任案がかかることもあり、閣僚がひな壇に入る。まっさきに目に入ったのは村上誠一郎総務相ひとりだけオーラが違うのが三原じゅん子こども相。当然、石破首相の向かって左隣は空席。

 額賀福志郎議長が入ってきた。細田博之前議長の弱々しい姿が記憶に新しいだけに颯爽とした印象を持つ。ほぼ全員が起立して議長を迎える。

 「ギチョーーー」と呼び出しするのは井野俊郎議員。やまびこのようによく響く。すこし長い気もするが声がいい。「石破内閣不信任決議案は・・・」。上程を求める動議に「異議なし!」。自民党議席からも響いたのは、儀礼か、それとも・・・。解散はすべての動議に優先される。官房長官を待つあいだ「延命!」と聞こえるヤジ。そして「ギチョーーー」というヤジ。

 官房長官から衆議院事務総長に詔書がわたった。議長が起立し、自民党議席も起立する。立憲議席は着席。まあそうなるか。ん?最前列で山岸一生議員がキョロキョロしているぞ。立憲も最前列の議員から立ち上がった。ほかの立憲議員も立ち上がる。

 「日本国憲法第7条により衆議院を解散する」。そこに「第何条だ!」とたたみかけるようにまたヤジが飛ぶ。万歳は起きない。所在ない額賀議長は窮して「御名御璽」までかすかな声で口にする。万歳はない。

 衆議院解散は起立も万歳のタイミングも、議員の所作の相当部分が〝空気〟で動く。傍聴席でみるとそれが実によくわかる。おかしな万歳三唱といえば先述の伊吹議長のときだが、それ以後は普通どおりにやっていたのだ。今回は「何条だ」というヤジに額賀議長が当惑し、議長の姿に議員も動けず、すべてがもつれたようにみてとれた。どんな内容のヤジでも言ってみるものである。

 長かった。みかねたように自民議席中盤から「バンザイ」の声が響く。追随するようにほかの議員も万歳三唱。

 なんなんだこの解散は。吉川赳議員が駆けだすように議場を去ったのがようやく目に入る。私は万歳三唱は政局の空気を映すと思っている。2009年の政権交代解散のさいは、当時の河野洋平議長が「いままで議員をやってきたなかでもっとも声がそろっていた」と評したほど見事なものだった。一方、自民党が割れ、野党にとっても不本意だったそのまえの05年・郵政解散はばらばらもばらばら。今回の万歳三唱は、野党がそっぽを向いて議長サロンで解散詔書を読むことをしいられた1986年の死んだふり解散のようなものを除けば、戦後政治のなかでもトップクラスにグダグダだったことは間違いない。議場の空気は政治の空気である。